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1.
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長い休暇を利用して、とある島に出かけることにした、あなた。 目的のない旅行をするのが今回の目的だ。 その船は、小さな島に向かうにしては不釣り合いなほど大きかった。 旅行客はあなたくらいのもので、その他には地元民と思われる人が数人ほど、船の座席はガラガラだ。 甲板の先で、あなたはゆったりとした時間を過ごしていた。 風の吹く方をぼんやりと眺めていると、水平線に浮かぶ島が見えてくる。 船は予想以上に早いスピードを出しているようで、猛スピードで島に近づいていくと、 船旅の余韻に浸る事なくあっという間に港に到着した。 船から降りたあなたは周りを見回してみる。どうやらこの船の港は、町から少し離れているようだ。 あてなく歩いていると、賑やかな屋根の小屋を見つける。 |
3.
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ネコは「ありがとう」と言ったわりには無表情で、さっさと物陰に歩いていった。 漁港では人々が巨大物体をどうするか話している。 と、その輪とは逆の方向からあなたを呼ぶ声がする。 |
4.
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「大変だ。人間たちが『海の神様』をつかまえちゃった。 はやく海に返ってもらわないと、人間が困る事になるのに。 ちょっとぼくは繋がれてるから、ひとっ走り島の裏まで行ってもらえないかな?」 |
5.
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「この手袋は、あの『海の怪物』に襲われた船仲間たちの墓代わりだ。 捕まえはしたが、まだあの怪物は生きている。 旅の人、すまないが、あいつの息の根を完全に止める方法を、博士に聞いてきてもらえないか」 |
6.
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漁港に向かう途中で、あなたはある光景を目にした。 どうしようか? |
7.
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奇妙な機構の船だったが、操縦は簡単でスイスイと海を走っていく。 不自然なほどの静けさで、魚の気配もまるで感じない。 |
8.
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漁港では巨大物体を処理する準備が進んでいた。 見慣れないものが次々用意されていく。 どこからかあなたを呼ぶ声が聞こえる。 |
9.
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しばらく途方に暮れて立ち尽くしていると、気づかないうちに波があなたの足下まで来ていた。 濡れないように海から少し離れると、次の波もまた、あなたの足下まで打ち寄せて来る。 |
10.
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足場がゴツゴツして歩きにくい海岸だ。 ちょっと休憩しようと腰掛けると、足下に何かのパックのようなゴミが落ちている。 どこかのゴミ箱にでも捨ててあげようと手に取ると、向こうに見える漁港が妙に騒がしい事に気が付く。 |
11.
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扉の奥のネコはするすると近づいてきて、ごく小さな所作で扉を開ける。 そして、そのまますぐに木の陰に潜り込み身を隠してしまった。 |
12.
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「安心しろ・・・・・・」と島の神は言った。 次の瞬間、海岸がこんもりと盛り上がると、一番近くにいたあなた目がけて向かってきて、 そのまま海に飲み込んでしまった。 その時、あなたは苦痛というよりむしろ不思議な心地良さを感じていた。 島の神は「・・・・・島の一部が海の一部になるだけだ」と続けた。 |
13.
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もう一度道を引き返し博士のところに行くと、どこから引っ張りだしてきたのか、 小さな船を手入れしている。 「もう海に怪物はいないんだったな」と博士。 |
14.
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「でかした!」と言うや否や、博士はあなたから『吸海石』を取り、怪物の体に触れさせた。 すると、びしょびしょに濡れていた海の怪物の体が、一瞬のうちに乾いてしまった。 そこまでの作業を素早くこなすと、 あとは見ているこちらが心配になるほどゆっくりとした手つきでそこら中から燃えそうなものを集め、 マッチで端から火をつけた。 |
15.
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多くの人が集まって、何か大きなモノを取り囲んでいる。 話を聞くと、どうやらこの包まれている中に何かがいるらしい。 |
16.
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「ボクが壁だとかそういう事はいいんだ。キミはこれ以上首をつっこまない方がいい。 彼らの事は彼ら同士で解決すればいいんだ。 どんなに感謝されても、ここの動物たちにとってキミだけはよそ者の外来種なんだよ」 |
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海鳥は言う。 「ここにあるのは『海神水』海の神様の力の源なのだ。 ただし、これを持ち出すには、人間が作る特殊な器が必要だ。 あの『ゴミ』と呼ばれている中にある、美しく澄んだ器さえあれば、海の神様を助けられるのだが」 |
18.
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教わった山道を歩いていると、格子扉があった。 あなたは、なんとか開けてみようとするが、びくともしない。 |
19.
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博士と呼ばれる男は、非常事態にもかかわらずのんびりとした時間を過ごしていた。 博士の言う事には、海の怪物を殺す為にはこの島の裏側に行って 『あるもの』を取ってこないといけないらしい。 もちろん今この村で手が空いているのは一人しかいない。 |
20.
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島の裏側に着くと、周りを見回してみる。 ここに行けとは言われたが、何をしたら良いのかは聞いていない。 |
21.
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木の葉を伝って火は怪物の方に向かっていく。 カラカラに乾いたその体の表面は、粉のようにボロボロと崩れ始めていて、 火が到達したとたん弾けるようにその体中に火がまわる。 まばゆい光を放ったかと思うと、跡形もなく燃え尽きた。 |
22.
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たしかに、自分ひとりの手でこの島を左右するような事があっていいのかは疑問だ。 重要すぎる役をさせられている事に気がついたあなたは、そもそもここに来た理由を思い出した。 帰りの船の座席につくと、窓の外から綺麗な島の風景が見える。 今回の旅行は、あなたにとって良いバカンスになっただろうか? |
23.
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すぐ足下を見ると一筋の流れがあった。 導かれるように辿っていくと、新たな海岸に出る。 |
24.
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振り返るとまたネコだ。 「私は島の神だ。やはりおまえに山の道を通して正解だったようだ」 と言うと、あなたから『海神水』を奪って海の神様にかけた。 すると大きな体は弾けるように赤い液体に変わり、そのまま海に流れていった。 |
25.
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どこまでもどこまでも追いかけてくる海から逃げていると、 海水が入り込んでも全く濡れていないところを見付ける。 どうやらそのあたりの石は、海水をどれだけでも吸収できるみたいだ。 あなたは自分の水分を奪われないように注意しながら『吸海石』を手に取った。 |
26.
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何人かの先客と一緒に糸を垂らすと、ゆっくりとした時間が流れ始める。 しばらくすると、ドタドタと大通りの方から何人かが走ってきて、釣り人の一人に向かって叫ぶ。 「とうとうあいつを捕まえたぞ!」 |
27.
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あなたの功績のおかげで海の怪物を倒す事が出来た。 これでこの島での海難事故はなくなるだろう。 あなたはこの平和をかみしめ島の人たちと、いつ終わるとも知れない宴を楽しんだ。 |
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(c) AMANO SHINTARO
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